国産救命艇を、未来へつなぐ。新工場から始まる、100億円企業への挑戦
下関市豊北町を拠点に、FRP製船舶や救命艇などを手がける株式会社ニシエフ。同社は、国産救命艇の供給体制を強化するため、生産能力の拡大と省力化を図る新工場の建設を計画しています。YMFGグロースパートナーズ(以下、YMGP)は、「100億宣言」で掲げる将来像と今回の成長投資を結び付け、成長投資計画の策定から大規模成長投資補助金の申請、採択に向けた準備まで伴走しました。対談では、新工場建設を決断した背景と、100億円企業を目指す今後の展望を伺いました。
―はじめに、ニシエフの歩みと、現在の事業について教えてください。

株式会社ニシエフ 綿谷 智史 代表取締役社長(以下、綿谷社長):当社は、化学メーカーの日本触媒が下関市豊北町に設けたFRP船の造船所を前身としています。FRPは、ガラス繊維などで補強したプラスチックです。軽く、さびにくいという特徴があり、船舶にも適しています。1999年に事業会社として独立し、「西日本FRP造船」の「ニシ」と、FRPの「エフ」を取って、ニシエフという社名になりました。
現在の事業は、船舶、救命艇、特殊艇の3本柱です。漁船をはじめ、旅客船や官公庁船、国内の造船所に納める救命艇、官公庁向けのゴムボートなど、さまざまな船を製造しています。なかでも救命艇は、当社が長年培ってきたFRPの成形技術と船舶設計のノウハウを生かす、主力事業の一つです。
―救命艇の生産体制強化に向け、新工場を建設される予定です。今回の成長投資を決断した背景と、補助金採択に向けたYMGPとの取り組みについて教えてください。
綿谷社長:現在、国内で使用される救命艇は、海外製が多くを占めています。昨今の国際情勢も踏まえ、救命艇を国内で安定して供給できる体制を整えることの重要性が高まる中、国から当社にも増産への期待が寄せられていました。

YMGP 課長 竹谷 佳朗(以下、竹谷):新工場の建設には大規模な投資が必要となるため、資金調達の一つとして大規模成長投資補助金の活用を検討され、取引銀行である山口銀行を通じてYMGPへご相談いただきました。
ニシエフさんは「100億宣言」を掲げ、売上高100億円を目指されています。今回の成長投資は、その将来像を具体化する重要な一歩です。YMGPでは、ニシエフさんの技術力や成長性、国産救命艇の供給を拡大する社会的意義を整理し、成長投資計画に落とし込む支援をすることとなりました。
綿谷社長:今回の成長投資は約25億円に上り、当社の事業規模から見ても非常に大きなものです。2020年頃から工場の拡張を検討していましたが、自社だけで計画を整理し、補助金の申請まで進めることには難しさがありました。
YMGPとの対話を通じて、これまで描いてきた構想と今回の成長投資の関係が明確になり、100億円企業に向けた道筋を具体的に示すことができました。

YMGP 課長代理 白石 秀一(以下、白石):申請までの期間が限られていたため、綿谷社長や社内の皆さまと週1回のペースで対話を重ね、技術面の強みや投資の必要性を一つずつ確認しました。
私たちは造船や救命艇製造の現場の外にいる立場だからこそ、「この技術の強みは何か」「なぜ今、この投資が必要なのか」を丁寧に掘り下げました。ニシエフさんの社内では当たり前と捉えられていた技術や事業の特徴も、外部から見ると大きな強みです。そうした価値を拾い上げ、事業に詳しくない方にも伝わる言葉で計画に落とし込むことが、YMGPの役割でした。
プレゼンテーション審査に向けては、綿谷社長ご自身の言葉で計画を伝えられるよう、発表内容を整理し、繰り返し練習しました。もともと綿谷社長が描いていた構想だからこそ、その意義を自らの言葉で伝えていただけたと思います。
―新工場では、生産性の向上や働く環境の改善に向けて、どのような取り組みを計画されていますか。
綿谷社長:新工場では、単に生産スペースを広げるだけでなく、これまで手作業で行ってきた工程の一部に機械化や自動化を取り入れ、生産性を高めていきます。例えば、材料となるガラス繊維の裁断を機械化するほか、当社の製造工程に合わせたアーム型ロボットを導入し、塗装工程の一部を自動化する予定です。
造船の現場には、屋外で行う過酷な作業というイメージがあるかもしれません。一方、当社が扱うFRPは、製造途中で雨に濡らすことができない工程も多く、基本的に屋内で製造しています。新工場では、地中の熱を活用した空調システムを導入し、工場内の温度を安定させることで、社員がより安全で快適に働ける環境を整える計画です。
生産性を高めるだけでなく、働く環境を改善することは、今いる社員に長く活躍してもらうためにも、今後新たな人材を迎えるためにも重要です。機械化や自動化を進めながら新たな雇用にもつなげ、設備と人の力を組み合わせて生産体制を強化していきたいと考えています。

竹谷:今回の成長投資計画では、機械化・自動化による生産性の向上と、社員がより力を発揮できる環境づくりの両立を重視しました。社員の負担軽減や働きやすい職場づくりに加え、新たな雇用の創出まで見据えています。
―補助金の申請に向けた取り組みを通じて、100億円企業への道筋はどのように具体化していきましたか。
竹谷:この申請は、補助金の獲得だけを目的としたものではありません。「100億宣言」で掲げた成長構想を改めて見つめ直し、救命艇、船舶、特殊艇の各事業をどのように成長させ、100億円企業を実現するのか。その道筋を綿谷社長と共有できたことは、この取り組みの大きな成果だと考えています。
綿谷社長:申請を通じて、100億円企業の目標に向けて改めて向き合い、その実現に必要な取り組みを具体的に考えることができました。
まずは新工場で救命艇や特殊艇の増産に向けた体制を整え、将来的には大型FRP船を継続的に建造できる体制も構築していきたいと考えています。
―最後に、ニシエフが目指す今後の姿と、YMGPの支援についてお聞かせください。
白石:国内で救命艇を製造する企業は限られており、その中でもニシエフさんは、大きな役割を担っておられます。これほど高い技術力を持つ企業が山口県にあることを、地域の皆さまにも広く知っていただきたいと思っています。新工場によって生産体制が強化されれば、国産救命艇の供給拡大に向けた大きな一歩になります。将来的には、国内の需要により多く応えられる体制の実現に向けて、引き続き支援していきたいと考えています。
竹谷:今回、ニシエフさんが描いてきた構想を成長投資計画として具体化し、100億円企業への一歩をともに踏み出すことができました。一方で、事業が成長するにつれて、人材の確保や育成、組織体制の整備など、新たな課題も生まれます。
ニシエフさんは、救命艇をはじめ、大型のFRP船や特殊艇など、高度な技術と独自の強みを持つ企業です。しかし、BtoBを中心とする事業であるため、その技術力や仕事の魅力が、地域や求職者に十分伝わっていない面もあります。YMGPとして、今回の補助金採択で支援を終えるのではなく、採用や企業価値の向上につながるブランディングも含め、100億円企業の実現に向けた次の課題に継続して伴走していきたいと考えています。
綿谷社長:YMGPと計画をつくったことで、これまで漠然としていた「100億円企業」という目標が、「100億円企業を実現する」という明確な意志に変わりました。実現に必要な取り組みを具体的に整理できたことで、目標を現実の経営計画として捉えられるようになりました。
会社の成長を新たな雇用につなげ、社員が誇りを持って働ける会社をつくりながら、目標に一歩ずつ近づいていきたいと考えています。
YMGPにも引き続き力を借りながら、100億円企業の実現に向けて挑戦を続けていきたいですね。
- ■本社所在地
- 山口県下関市豊北町粟野4238番地
- ■従業員数
- 77名
- ■事業内容
- FRP船並びに関連製品の製造販売等
- ■Webサイト
- https://nishi-f.co.jp/



